前衛的なWeb文学5選

こんにちは、ホリメグルです。

インターネットをぶらつき、隠れた名作を探すのが趣味の者です。

今回のテーマは【前衛文学】。従来の小説や詩のルールに囚われない、前衛的な作品を紹介します。

思念戦線/オカダケイス

URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054884657297

小説投稿サイト『カクヨム』で短編集1作と中編2作を発表している、オカダケイス氏の『思念戦線』。実験ポイントは文章のルールです。

SF小説では独自の世界を表現するために、実験的な要素が導入されることがあります。例えば、

・使用する文字に制限をかける(筒井康隆『残像に口紅を』)

・特殊な文字組み(アルフレッド・ベスター『虎よ!虎よ!』)

・変化する文体(ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』)

オカダケイス氏の『思念戦線』も、こういったSF×実験小説の系譜に連なる作品です。基本的には普通の小説のルールで書かれているのですが、要所要所でルールの破壊が行われます。

バトル要素やミステリー要素もあり、エンタメ性が高いのも良いところ。実験的でありながら難解ではない、優れた娯楽作品です。

四人称小説『桃太郎』/みなもとあるた

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330651281990625

『pixiv』を本拠地として、アイデア重視の奇抜な小説や台本を多数生み出している、みなもとあるた氏のショートショート。実験ポイントは視点です。

語り手の目線で物語を語る、一人称。

作中の人物に向けて「君」や「あなた」と呼びかける、二人称。

特定のキャラクターの視点、もしくは神の視点で描写を行う、三人称。

そして、上記のいずれにも当てはまらないものを「四人称」といいます。つまり「四人称」とは「一人称でも二人称でも三人称でもないその他すべて」を指す言葉です。なので、四人称が何を意味するかは作者によって大きく異なります。

四人称で小説が書かれることはごく稀です(横光利一『機械』が比較的有名)。そんな困難な試みに挑戦したのが本作になります。昔話の定番『桃太郎』を四人称で語るという実験小説です。

みなもとあるた氏の提唱する「四人称」とは、一体どんな文体なのか? 興味を惹かれた方はご一読ください。

豊穣なる語彙世界/工藤行人

URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054888143292

日本の古典文学や漢詩に影響を受けた独自の作風を持つ、工藤行人氏の代表作。実験ポイントは語彙です。

一話完結の短編集なのですが、一般的な小説では見かけない珍しい単語(稀少語)が頻出します。例を挙げると、囲繞いにょう(周りを取り囲むこと)・菟裘ときゅう(隠居して暮らす土地のこと)・冲融ちゅうゆう(穏やかな気分を表す言葉)……などです。

小説や詩で珍しい単語が登場するのはよくあることですが、『豊穣なる語彙世界』の凄いところは、稀少語を単なる装飾として使うのではなく、全編にわたって用いることで確固たる文体を作り上げている点です。何らかのコンセプトで、使用する文字や単語の統一が図られることもあります。

しかもそれだけに留まらず、造語・特殊ルビ・古典文学の技法(掛詞など)・言葉遊び・作者自身による注釈といった膨大な要素が本作にはつぎ込まれています。形式も散文・戯曲・短歌・漢詩と、多種多様です。

この文学の主役は言葉です。単語の組み合わせによって構築される、豊かな語彙の世界。これは物語を語るための文学ではなく、文字の可能性を追求するための文学なのです。

正直、読みやすくはないです。物語性は希薄だし、単語は調べないと意味がわからないし、流し読みは絶対に不可能。時間がある時に、単語を一つ一つ調べて意味や背景を噛み締めながら、じっくり味わってください。

CaveDiver/_underline

URL:https://note.com/_underline/n/ne49846eb5840?magazine_key=mec39ebfde57e

複数の名義を使い分け、小説やインスタレーションを発表している_underline氏の連作『CaveDiver』。実験ポイントは視覚性です。

『CaveDiver』は図像小説です。図像小説とは_underline氏が提唱する概念で、文字の濃淡によって絵を浮かび上がらせる小説のことです。アスキーアートやコンクリート・ポエトリーで使われる手法を小説に応用することで、意味の重層化が図られています。

形式だけではなく内容もかなり独特です。タイトルが示すとおり、ケーブダイバー(洞窟潜水を行うダイバー)を主人公に据えているのが、まず異色。

本文の語りは極めて断片的ですし、「文字で絵を描く」という制約のために文字の種類(ひらがな・カタカナ・漢字)に偏りが生じた文体は図像小説ならではのものです。

また、作品が進むにつれて文字の濃淡以外の視覚要素も現れるのですが、これが図像小説というジャンルと見事に合致しており、極めて効果的。ぜひ見てほしいです。

図像小説『CaveDiver』は作者のInstagramで公開されているシリーズですが、その最初の36作がリンク先のnoteで読めます。productive Restは_underline氏の別名義です。

カクヨム地底7000メートル/かぎろ

URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054883788297

シリアスな現代ドラマから破壊的なギャグ満載のコメディまで、幅広いジャンルを手がける、かぎろ氏。

実験的な作品もいくつかあり、そのうちの一つが『カクヨム地底7000メートル』。実験ポイントは媒体です。

紙や電子書籍といった媒体の特性を活かした仕掛けは、実験小説では定番のネタです。

例えば、ページの一部を物理的に切り抜く「ダイカット」、鉛筆でこすると隠れた文字が現れる「フロッタージュ」は、紙媒体に特化したギミックです。「他の媒体では絶対にできない」という固有性が強ければ強いほど、良い仕掛けだと言えるでしょう。

その点、『カクヨム地底7000メートル』は媒体の特性にこだわりまくっています。『カクヨム』で埋もれた小説を発掘する人々をテーマにした物語の中で、Web小説でしか使えない荒技が炸裂します。ストーリーと実験性がぴたりと噛み合った名作です。